【報告】第2回関西パレスチナ研究会

実施日時:2017年1月28日(土) 13:00~18:00
実施場所:立命館大学大阪いばらきキャンパス, B棟研究室1

報告①「自伝的著作から見るパレスチナ系アメリカ人2世のアイデンティティ―ナジラ・サイードの自伝を例に」
佐藤愛(京都大学大学院人間・環境学研究科)

報告者はエドワード・サイードの娘であるナジラ・サイードの自伝Looking for Palestineの内容の分析をもとに, パレスチナ系アメリカ人2世のアイデンティティ形成に混乱が生じていると論じた.これはナジラ・サイードが自らを”Palestinian-Lebanese-American-Christian”と呼び, 宗教と民族の複合的なアイデンティティが読み取れるという.
上記の報告に対して以下の質問・コメントがなされた.ディアスポラのアイデンティティ形成の中で文学がどのように位置づけられるか, すなわち他の手段との比較においていかなる重要性をもつか.また, アラブ系アメリカ人文学に関する先行研究の中での位置づけ如何, そして支配者の言語(アラビア語ではなく英語)を使用することに関する視点の必要性が質問・指摘された.
(文責:岡部友樹)

報告②「エルサレム世界宣教会議(1928年)とグローバル植民地主義」
役重善洋

報告者は1928年に行われた「エルサレム世界宣教会議(Enlarged Meeting of the International Missionary Council)」を国際政治史の文脈に位置づけ, その歴史的意味を論じた.本論では「国際協調体制」下における東アジアと中東を比較しながら「グローバル植民地主義」の利害により, 会議において朝鮮問題とパレスチナ問題が意図的に看過・等閑視されていたと論じ, そこに政治性を見出すものであった.両者を簡潔に記せば, 一方で日本の朝鮮統治に関して批判的な議論がなされることはなく, 共産主義への対応という旗印を掲げた英・米・日の協調体制という背景があった.他方で中東におけるパレスチナ問題は会議の中で等閑視されたものの, 世界宣教会議がエルサレムで開催されたことに対してムスリム側からの反発があり, 「エルサレムの政治化」をもたらした.
上記の報告に対して, 結論において世界宣教会議とグローバル植民地主義の関係が依然として見えづらいというコメントがなされ, 同時代における東南アジアなどの他地域に関する質問がなされた.
(文責:岡部友樹)