【要請書】イスラエルによるパレスチナ占領、住民追放、ガザ封鎖の終結のための行動を求めます

2021年5月10日~21日に起きたイスラエルによるガザ地区への大規模攻撃という事態を受けて、関西パレスチナ研究会では緊急声明と日本政府への要請書を発表しました。

==================================================

菅 義偉 内閣総理大臣 

茂木敏充 外務大臣   

岸 信夫 防衛大臣   

梶山弘志 経済産業大臣 

 


 イスラエルによるパレスチナ占領、住民追放、ガザ封鎖の終結のための行動を求めます

 

 

関西パレスチナ研究会

2021524

 

私たち関西パレスチナ研究会は、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区、ガザ地区、および、イスラエル領内で数多くの生命が不当に奪われ、パレスチナ人の人権がさらに抑圧され続けるという事態を強く憂慮しています。そのため、日本政府の関係諸機関に対し、イスラエルによるパレスチナ占領、住民追放、ガザ地区封鎖の終結のため、以下の5点について行動することを求めます。


 1.イスラエル政府に対し、ガザ地区への攻撃停止を継続するよう要求するとともに、人権侵害と人道危機をもたらしているガザ地区の封鎖の解除を要求すること。

510日から21日までに、ガザ地区では、イスラエルの攻撃によって65人の子どもを含む242人のパレスチナ人が殺害されました。521日、停戦合意が発効したことを受け、政府は、ガザ地区への攻撃停止を継続するよう、イスラエル政府に要求することを求めます。今回の衝突の根本原因の1つは、2007年以来、ガザ地区がイスラエルによって境界線を封鎖され、住民が人道危機の状況に置かれていることにあります。この状況を打開するため、イスラエルだけでなく、「ハマースの実効支配」という理由で封鎖に協力する米国とEU諸国に対しても、封鎖解除を要求することを求めます。

 

2.2014613日以降のヨルダン川西岸地区とガザ地区で行われた戦争犯罪に関する国際刑事裁判所の捜査開始が公正かつ迅速に行われるよう協力すること。

 今年3月、国際刑事裁判所(ICC)は2014613日以降のヨルダン川西岸地区とガザ地区における戦争犯罪について調査を行う旨を決定しました。日本政府には、植民地支配下の人々が民族解放のために闘争する権利を認めた国連総会の決議[i]を改めて想起するとともに、1967年以降の占領に反対する立場から、またICCの主要ドナー国としてICCにおける戦争犯罪の調査が円滑・公正に進むよう、イスラエル政府を含めた関係国・機関に協力を要請することを求めます。


3.イスラエルとの外交・経済協力・安全保障関係を再検討すること。

1973年、第4次中東戦争の開始に際して当時の二階堂進官房長官は、イスラエルにおけるアラブ領土の占領継続を「遺憾」と述べ、1967年にイスラエルが占領したすべてのアラブ領土からの撤退を呼びかけ、情勢によってはイスラエルに対する政策を再検討すると述べました。それから半世紀ちかくが経ち、「情勢」は格段に悪化しています。しかし日本政府は、とりわけ20155月の「日本・イスラエル間の新たな包括的パートナーシップの構築に関する共同声明」以降、同国とのセキュリティ協力等、二国家関係を緊密化させています。イスラエルのセキュリティ産業は軍との関係が深く、パレスチナ人に対する戦争犯罪や人権抑圧に日本が関与するリスクを憂慮します。また、イスラエルの海外における諜報活動や暗殺作戦などもよく知られるところであり、そうした犯罪行為に日本が巻き込まれたり、利用されるリスクも無視できません。今回の事態を踏まえ、イスラエルとの外交・経済協力・安全保障関係について再検討することを求めます。

 

4.イスラエルの占領と戦争犯罪を終結させるために必要な国際的圧力の形成に向けた努力を行うこと。

ガザ地区、ヨルダン川西岸地区、イスラエル領内でのイスラエル軍・警察等による暴力に対し、国際連合、とりわけ安全保障理事会において効果的な議論が進められ、国際社会として有効な対応ができるよう、安保理常任理事国を含む各国に呼びかけることを求めます。特に、米国が、暴力の停止、ガザ地区の封鎖の解除、占領の停止、入植地の撤去等を求める安全保障理事会決議に拒否権を使わないよう、米国政府に働きかけることを求めます。また、イスラエル入植地製品の輸入禁止、武器や軍事転用可能な民生品のイスラエルへの輸出禁止に向けて具体的な検討を早急に開始することを求めます。

 

5.中山防衛副大臣のイスラエル軍による攻撃支持の発言を削除すること。

中山泰秀防衛副大臣が、イスラエル軍によるガザ地区攻撃を支持するツイッター上の発言(2021512日付)に対する大量の批判を受け、問題の投稿を削除したことは当然のこととして、この発言を支持する内容のツイッター投稿やブログ記事[ii]がそのままになっているため、それらも削除することを求めます。これらの投稿や記事は、ツイッター上の発言と同様、国際法に基づいてイスラエルによる占領に反対する日本政府の方針と明らかに矛盾しており、中東諸国との外交関係に重大な支障が生じることが予想されるからです。世耕弘成自民党参院幹事長によれば、中山防衛副大臣は、発言を削除した理由として「ご迷惑をかけたから」と説明したとのことです。当会は、この発言がどのように問題だったと考えるのかについて、中山防衛副大臣が自ら説明し、国民と国際社会に対する説明責任を果たすことを求めます。

(私たち関西パレスチナ研究会は、パレスチナ問題、及び、パレスチナ/イスラエルを専門とし、関西地方等に拠点を置く研究者のグループです。)

 

関西パレスチナ研究会

連絡先:palestine.kansai @ gmail.com



[i] 国連総会決議3314号(1974年)、国連総会決議3743号(1982年)。

[ii] 「令和32021)年512 記者会見@防衛省:毎日新聞 畠山記者からの問いに対する回答。」(https://ameblo.jp/nakayamayasuhide/entry-12674355265.html)、513日午前839分付ツイッター投稿(「日本のイスラム思想研究者・飯山陽先生から、メッセージを頂きました。・・・」)