関西パレスチナ研究会の第2回研究会の様子を以下の通りご紹介します。
実施日時:2023年1月14日(土) 13:00~17:15
実施場所:大阪女学院大学/オンライン
【報告①】
報告者:役重善洋(同志社大学人文科学研究所嘱託研究員)
報告タイトル:シオニズムと聖書考古学-エルサレムおよびマサーフェルヤッタを訪ねて
報告者は、2022年11月のパレスチナ現地調査の成果に基づき、①Wahat al-Salam/Neve Shalom村の概要、②エルサレム旧市街における欧米・イスラエルの聖書考古学の歴史的変遷、③シルワーン地区でのIr David Foundationとイスラエル考古学局による発掘活動とAteret Cohanimによる入植活動の概要、及び、それらによるパレスチナ人住民の被害の状況、④クリスチャン・シオニストが創設したFriends of Zion Museum訪問の所感、⑤マサーフェルヤッタにおける強制移住問題の現状と訪問時の所感について報告と考察を行った。コメンテーターの今野からは、調査がイスラエルの植民地主義の諸相を包括的に捉えていることを評価するコメントと、パレスチナ人の抵抗の在り方に関する報告者の評価、及び、研究の今後の展望についての質問があった。出席者との質疑応答では、強制移住と家屋破壊の関係性についての質問や、日本聖公会のパレスチナ支援活動に関するコメント等があり、活発な議論がなされた。
【報告②】
報告者:金城美幸(立命館大学生存学研究所プロジェクト研究員)
報告タイトル:Kairos PalestineおよびGlobal Kairos for Justice国際会議に参加して
報告者は、2022年11月にパレスチナで開催された第13回カイロス会議(2022年11月18日~19日)に関する報告を行った。報告者が会議に参加した経緯や報告者自身の関心と会議の関係についての説明の後、カイロス会議開催の契機となった2009年カイロス・パレスチナ文書の特徴を考察した。カイロス会議は、カイロス・パレスチナ会議と正義のためのグローバル・カイロス会議の二部構成で、カイロス・パレスチナ文書の目的を実現していく活動の成果と課題を共有し、議論する場として位置づけられているとの説明があった。カイロス会議の課題として、グローバル・サウスからの参加者を増やすこと、若者や女性の参加や関与を増やすこと等があるとした。コメンテーターの今野からは、日本のキリスト教諸教会へのアプローチの展望について質問があった。出席者との質疑応答では、1948年パレスチナ人の類似した運動との関連性や、連帯の可能性と限界に関する質問などがあり、活発な議論がなされた。
(文責・今野泰三)