【報告】第2回関西パレスチナ研究会連続セミナー「国際法から見るエルサレム問題」を開催しました

 【開催日時】:2021年7月17日(土)18:00~20:00

司会の松野明久氏がセミナーの趣旨を説明し、山本健介氏がエルサレム問題の基本解説をした後、エルサレム在住のムニール・ヌサイバ氏が、エルサレムのパレスチナ人が置かれた現状について、イスラエルによる民族浄化、人口操作、植民地化という観点から講演を行った。講演の概要は以下の通りである。

1947年から1948年にかけて、シオニストたちはパレスチナ全域で民族浄化を実行し、その後も現在まで強制追放、家族統合の制限、差別的な都市計画などを通じてエルサレムの住民構成を変えてきた。イスラエルは東エル
サレムを国際法に反して併合し、パレスチナ人に「永住権」を与えたが、その地位も容易に取り上げることができる。東エルサレムのパレスチナ人がヨルダン川西岸地区やガザ地区の住民と結婚した場合、配偶者は更新が必要な滞在権しか得られない。両親の
1人がヨルダン川西岸地区、ガザ地区、あるいは外国籍の場合、エルサレムに生まれても永住権を得られず、いかなる法的地位もない状態に置かれる場合がある。

(インフォグラフィック:https://al-shabaka.org/wp-content/uploads/2017/01/English-infographic.jpg

質疑では、国際刑事裁判所と日本政府に期待される役割や、パレスチナ人にとって望ましい統治形態などについて問題提起がなされ、濃密で貴重な学びの機会となった。(今野泰三)

記録動画リンク:https://www.youtube.com/watch?v=gahHXcKTZV0


【報告】第1回関西パレスチナ研究会連続セミナー「ガザ地区における国際援助と女性の権利」を開催しました

【開催日時】:2021年7月1日(木)18:00~21:00

 セミナーでは、まず今野泰三氏によるガザ地区の基本解説がなされた後に、パレスチナの現状について国際援助のもたらす影響や女性の社会的権利といった視点から、ガザ出身の2名の話者が講演を行った。  
 
 イヤース・サリーム氏は、パレスチナに対する今日の国際援助が「グローバル化された帝国」の文脈で行われており、そこではパレスチナ問題の解決ではなく現状維持が優先されてきたと指摘する。この「帝国」とは、米国とその支援を受けるイスラエルや権威主義体制、軍需産業や主流メディアに代表される資本と企業、そして諸外国政府による公的援助などが絡み合い、広範に形成するシステムを指す。これらを転換し、解放に向かうためには、同じくグローバルな応答が必要である。Black Lives Matter (BLM)、先住民族、女性の権利運動など、各地で抑圧に抵抗し、平等と公正を求める動きとの連帯がますます重要になっていると述べた。  
 
 ヌール・サッカー氏は、イスラエルによる占領とパレスチナ社会の家父長制との交差を背景に、パレスチナ人女性のこれまでの歩みや、若い世代による新たな動きを紹介した。2018年春にガザで起きた「帰還の大行進」は、週ごとに女性の参加者も増え、若い世代が行動の主体性を取り戻すきっかけになったと指摘する。最近では、性被害や暴力について匿名で話し合えるグループがSNSを中心に発足し、これまでのタブーが破られつつあるという。また、植民地主義や人種差別、国家暴力など共通の問題と対峙するBLM運動との連帯や、具体的な取り組みとしてのBDS(ボイコット、資本引揚げ、制裁)運動についても説明した。  
 
 質疑では、パレスチナにおける女性運動の広がりや、最近のパレスチナ自治政府に対する抗議行動のほか、オスロ合意以降の日本を含めた援助の在り方についても問題提起がなされ、濃密で貴重な学びの機会となった。(報告作成:南部真喜子)