『パレスチナの民族浄化』刊行記念シンポジウム
日本におけるナクバ研究の深化に向けて
●場所:京都大学吉田南総合館南棟地下 共南01教室
『パレスチナの民族浄化』の刊行によって、1948年のイスラエル建国にともなうパレスチナ人のナクバ(「大災厄」)の全体像に関するもっとも重要な歴史書の一つを日本語で読み、議論を共有することが可能となった。イラン・パペは本書で、イスラエルの公文書とパレスチナ側の証言をもとに、パレスチナ人の追放作戦におけるマスタープランの作成と計画実施のプロセスを明らかにし、それが「民族浄化」という国際的に裁かれるべき犯罪であることを告発する。そして占領の固定化やナクバの記憶抹殺のためのイスラエルの政策が現在まで継続・再生産されていることを示し、イスラエル国家のあり方を鋭く批判している。
本シンポジウムは、同書刊行の意義を確認するにとどまらず、それぞれの研究者が自身の問題意識に同書の内容をひきつけ多角的に議論することを通じ、日本におけるナクバ研究の深化に貢献することを意図している。原著刊行から10年が過ぎ、ナクバ研究における本書の立ち位置がいっそう鮮明にはなっているが、一方でそれは他地域における「民族浄化」の事例の理解を深める手がかりとなりうるのか。ナクバの歴史経験によって導き出されるイスラエル国家のあり方への批判は、現在の国民国家体制を問う手法としてどこまで有効なのか。他地域における「民族浄化」の背景・手段・経緯と照らし合わせ、ナクバおよびその背景にある植民地政策の特異性を浮き彫りにしつつ、こうした問いを検討してみたい。国家体制のあり方が世界各地で行き詰まりを見せるなか、現在の日本社会のあり方を問題化するアクチュアルな市民的関心とも交差することを期待したい。
●プログラム(予定)
司会:岡真理(京都大学大学院人間・環境学研究科)
【第1部】:パレスチナ研究と「民族浄化」
[訳者報告]
・早尾貴紀(東京経済大学経済学部)
「〈1948年〉の世界史とポスト・オリエンタリズムの課題」
・田浪亜央江(広島市立大学国際学部)
「イスラエルと日本 「2つの不条理」への共時的視点」
[問題提起・1]
・高橋宗瑠(元国連人権高等弁務官事務所パレスチナ副代表)
「国際法における民族浄化」
・金城美幸(日本学術振興会特別研究員RPD)
「いかにナクバに接近するか――手がかりとしての民族浄化の語り」
【第2部】:異なる視点/他地域からの介入
[問題提起・2]
・鈴木隆洋(同志社大学グローバルスタディーズ研究科博士後期課程)
「定義、単離、管理」
・松野明久(大阪大学大学院国際公共政策研究科)
「ナクバのメモリサイドとパレスチナ人の真実への権利」
・安岡健一(大阪大学大学院文学研究科)
「イラン・パぺの「民族浄化」論と戦時・戦後の日本の経験」
訳者からのコメント
フロア・セッション
●主催:
関西パレスチナ研究会
京都大学大学院人間・環境学研究科 岡真理研究室
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所中東イスラーム研究拠点(人間文化研究機構「現代中東地域研究」事業)
パレスチナの平和を考える会
●連絡先:palestine.kansai〓gmail.com(〓を@に)