実施日時:2022年5月28日(土) 14:00~17:00
実施場所:大阪女学院大学
報告タイトル:Social Fragmentation and Changes in Community Organization in the Post-Oslo Era
報告者:ジョシュア・リカード(熊本大学多言語文化総合教育センター特任准教授)
報告者は、博士論文を元にした著書の内容に沿ったかたちで、①プレ・オスロ期、②ポスト・オスロ期、③2020年以降の三期に分けて、パレスチナの市民社会、とりわけ彼がフィールド調査を行ってきたナブルスにおけるコミュニティ組織の在り方について論じた。①の時期に、離散難民社会、さらに被占領地という異なる状況下で形成された多層的なパレスチナ・ナショナリズムが、②の時期の占領政策や新自由主義的な国際援助によって地理的・政治的・階級的・心理的に分断されていったプロセスについて、ナブルスの状況を参照しつつ、具体的に説明された。さらに、③の時期において見えてきたポジティブな変化についても最後に述べられた。既成の政治組織に失望・反発する若い世代のパレスチナ人たちが分断を乗り越えた連帯を志向し、新たなアイデンティティと抵抗のネットワークを形成しつつあること、また、自治政府の機能や信頼が低下しつつある中で地域コミュニティの動きが活性化していることが指摘された。質疑応答では、会場とオンライン双方からコメントや質問が出され、活発な議論がなされた。
(文責・役重善洋)